重力・運動・エネルギー・相対性理論——作品に潜む物理学の本質
この本には、SF的な「嘘」がほとんどない。グレース博士が宇宙船の中で行う推理や実験は、実際の物理学に基づいている。だからこそ読んでいて「本当にそうなのか?」と確かめたくなる。このガイドは、その「確かめたい」という気持ちを物理学の学習につなげるためのものだ。
よく「宇宙には重力がない」と言われるが、これは正しくない。国際宇宙ステーション(ISS)は地上400kmほどにあり、そこでも地球の重力はほぼ同じ強さで働いている。
では、なぜ浮くのか?答えは「ずっと落ち続けているから」だ。ISSは猛烈な速度(秒速約7.7km)で飛びながら、地球に向かって落ち続けている。その落下の弧が地球の丸さとちょうど一致するため、いつまでも落ちながら飛び続ける。この状態を「軌道運動」という。
船の中のものも、船と同じ速度で落ち続けているので、お互いに「落ちている感覚」がなくなる。これが「無重力に見える」理由だ。
万有引力の法則を発見。「月も、リンゴも、同じ重力で落ちている」という洞察から、軌道運動の仕組みを数学で記述した。著書『プリンキピア』(1687年)はその集大成。
振り子の最大の不思議は、「重さが違っても周期が同じ」ことだ。鉄のおもりでも木のおもりでも、同じ長さの紐なら同じ時間で揺れる。これをガリレオが発見した(16世紀)。
なぜそうなるのか?重い物体は重力を強く受けるが、同時に「動かしにくさ(慣性)」も大きい。この2つがちょうど打ち消し合うため、質量が消える。残るのは「紐の長さ」と「重力加速度 g」だけだ。
ピサ大聖堂のシャンデリアが揺れるのを見て、振り子の等時性(重さによらず周期が一定)に気づいたとされる。後に望遠鏡を改良し、木星の衛星を発見した。
回転する乗り物の中では外側に引っ張られる感覚がある。これを「遠心力」と呼ぶが、実はこれは実在する力ではない。
本当に働いているのは「向心力」だ。物体はまっすぐ進もうとする(慣性)が、回転する壁がそれを押し戻す。その押し戻される感覚が「外側に引っ張られている」ように感じられる。遠心力は、回転する系の中にいる人が感じる「見かけの力」(慣性力)だ。
宇宙ステーションで同じ「重力感覚」を作るには、半径 r で角速度 ω で回転させると、向心加速度 a = ω²r が発生する。これを地球の g(9.8 m/s²)と等しくすれば「地球と同じ重力感覚」になる。
エネルギーは生まれず、消えない——これをエネルギー保存の法則という。形を変えるだけだ。太陽では核融合反応によって水素がヘリウムに変わり、その「質量の差」が莫大なエネルギーとして放出される。
これを記述するのがアインシュタインの有名な式だ。質量もエネルギーの一形態であることを示している。アストロファージはこのエネルギーを体内に蓄える「生きたバッテリー」として機能する設定になっている。
光は「光子(フォトン)」という粒子でできており、その1個のエネルギーは周波数(色)で決まる。植物の光合成も、光子のエネルギーを化学エネルギーに変換している。アストロファージはその究極版とも言える。
1905年「奇跡の年」に特殊相対性理論を発表。E=mc²はその帰結として導かれた。量子力学の基礎にも貢献し、光電効果の説明でノーベル賞(1921年)を受賞した。
音は空気(や固体・液体)の振動が伝わっていく波だ。1秒間に何回振動するかを「周波数」(ヘルツ、Hz)という。人間が聞こえる範囲は約20Hz〜20,000Hz。
周波数が異なれば「音の高さ」が変わる。ドの音が262Hz、1オクターブ上のドが524Hz(2倍)。これは世界共通の数学的関係だ。異星文明でも物理法則は同じなので、周波数の「比」は共通言語になりうる。
1905年、アインシュタインは「光速は誰から見ても同じ」という前提から驚くべき結論を導いた。速く動く物体は、静止した観測者から見て時間の進みが遅くなるのだ。
これを「時間の遅れ(時間膨張)」という。例えば光速の99%で動く宇宙船では、船内の1年が地球の7年以上に相当する。宇宙旅行者は若返って帰ってくることになる。
これはSFの「嘘」ではない。GPS衛星は高速で動くため、この補正をしないと位置誤差が1日で数kmに達する。スマートフォンのGPSは相対性理論で動いている。
力と運動:慣性の法則、作用反作用、運動方程式の入口
波・音:振動数、波長、音速、反射・屈折
エネルギー:位置エネルギー・運動エネルギー、保存の法則
天体・宇宙:太陽系のスケール感、光年の概念
物理基礎:単振動(振り子の理論)、万有引力の法則(定量的)、エネルギー保存の法則
物理:波動(干渉・回折)、円運動(遠心力の正確な理解)
発展:特殊相対性理論、量子力学の入口(光子・光電効果)
『宇宙は何でできているのか』村山斉 — 素粒子から宇宙まで、日本語で一番読みやすい現代物理入門
『ご冗談でしょう、ファインマンさん』R.P.ファインマン — ノーベル賞物理学者の自伝。科学とは何かを学ぶ最高の読み物
『物理のための数学』和達三樹 — 高校数学から物理数学への橋渡し